| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-684
京都会議以降IPCCの報告等から地球の温暖化は確実視されており、その原因の1つである炭素(CO2)のより正確な動態を知る事が必要とされている。このような背景から陸上生態系における炭素収支はその規模の大きさから注目を浴びており、生態系の構造と機能を炭素の動態によって評価するという視点からも重要な意味を持っている。本研究はそのような意味を踏まえ、より正確な炭素動態収支を推定するために土壌呼吸に焦点を当て、その生態系機能の解明の目的をもって研究を行った。
調査地は岐阜県高山市の冷温帯落葉針葉樹の人工林である50年生のカラマツ林を対象に行った。土壌呼吸速度はVAISALAのCO2センサーを用いた密閉法で測定した。また根の呼吸速度をカラマツと林床植生であるササに分けて毎月定期的に測定した。さらに土壌呼吸から根の呼吸を差し引く事により、土壌微生物の呼吸を推定した。環境要因としては地温(深度10cm)と土壌水分をTDR法により測定した。また樹木の毎木調査、倒木のマッピングを行い炭素プールの平面的な分布を算出した。
その結果、土壌呼吸速度と根の呼吸速度は明らかな季節変化を示し、その変化は地温の季節変化と良く対応していることが確認された。温度‐呼吸曲線と地温の変化から土壌呼吸量を推定すると、この森林生態系における年間の土壌呼吸量は512.9gC/m2/yとなり、調査地に隣接したシバの草原の値と比較すると小さい値となった。また土壌呼吸に対する根呼吸の寄与率は約27%と推定され、土壌微生物呼吸に比べその寄与率が低いことが示された。バイオマスやCWDなど炭素プールの分布と土壌呼吸速度の空間的なバラツキを比較したところその関係性が認められた。