| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-685

樹木伐採が土壌のN2O fluxに与える影響 -樹幹からの距離に着目して-

*仁科一哉, 竹中千里(名大院生命農), 谷貝勇樹(名大農), 石塚成宏(森林総研)

近年、森林の様々な生態系サービスが着目されているが、施業遅れの人工林では本来あるべき機能の低下が指摘されており、間伐の推進が急務と考えられている。一方、間伐は温室効果ガスであるN2Oの土壌からの放出を促進させる事が報告されている。この現象は、林冠の開口による林床環境の変化や伐採作業に伴う土壌の攪乱、樹木根活動低下に伴う栄養吸収の減少などによる土壌の理化学性の変化などの複合的要因として引き起こされていると考えられているが、各要因は個別に検討されていない。そこで本研究では、特に樹木根の活動低下に着目し、以下の仮説を立てた。樹木根活性の低下によって引き起こされるならば、樹木伐採によるN2O放出の変化量は、根量の差異により樹幹からの距離によって異なる。この仮説を検証する為、樹幹から50 cmと150 cm離れた位置における樹木伐採前後のフラックスを測定し、フラックスの変化、温度・水分依存性から伐採の効果を評価した。

本試験は名古屋大学演習林の褐色森林土に生育する35年生のスギ林で行なった。お互いに十分に離れた対象樹を5本選定し、各樹の斜面に向かって上、右、下、左の4方向に、樹幹から50 cm、150 cmの位置にflux測定用チャンバーを設置した。2008年5月から11月まで計13回のN2O fluxの測定を行ない、7/25にチャンバー内の土壌を攪乱しないように樹木の伐採を行った。併せて、地温、土壌水分、深度別の土中N2O濃度の観測を行なった。本試験設定はネストされた構造を持つ為、この構造をランダム効果とした階層ベイズモデルによって伐採の効果を定量的に推定した。

観測の結果、伐採によるN2O fluxの増加が確認され、また樹幹からの距離に応じて伐採のN2O fluxへの影響程度は異なった。本講演では、モデルの推定結果を踏まえ詳細な議論を行う。


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