| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-691
土壌には地上部植物バイオマスの約3倍の炭素が有機物として蓄積している。土壌構造は、有機物を分解者から物理的に保護し有機物分解を抑制することにより、有機物蓄積に寄与していると考えられている。この土壌構造の形成と有機物蓄積には、しばしばミミズなどの大型土壌動物の摂食活動が関与している。
本州中部地方に高密度で分布する大型土壌動物のキシャヤスデは、8年の生活環を持ち、その地域個体群は同調して成熟し、また成虫は落葉と土壌を混食することが知られている。この摂食活動が短期的には土壌への炭素隔離を促進することが実験的に示されている。しかし、野外土壌における長期的な有機物蓄積様式への影響については明らかではない。本研究では、特に八ヶ岳周辺のキシャヤスデ地域個体群が8年の周期で同調していることに着目し、1999年と2007年のキシャヤスデの生息履歴が異なるカラマツ林において、土壌の団粒化(サイズ画分)と土壌有機物の性質との関係について調べた。
1999年に高密度のキシャヤスデ生息履歴を持つ林分では、2 mmよりも大きなサイズ画分の割合が大きくなる傾向を示した。土壌構造を破砕後に比重法による有機物分画を行い、炭素濃度・C/N比を調べたところ、大きなサイズ画分土壌に含まれる軽い有機物は比較的高い炭素濃度・C/N比を示した。キシャヤスデ生息履歴をもつ林分では、キシャヤスデによる土壌構造の改変作用により大型の団粒が形成され、有機物は団粒内部で分解作用を受けにくい状態で蓄積していたと考えられる。