| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-694

火入れ地における土壌中の炭素蓄積量の定量化

*米川修平(鳥取大・農),佐野淳之(鳥取大・農)

我が国は世界有数の火山国であり、火山灰などの火山噴出物を母材として生成した黒ボク土が広く分布する。土壌の14C年代測定によって年代が異なる黒ボク土においても植物炭化物片が広く分布することが明らかにされている。本研究の調査地である岡山県真庭市の蒜山地域でも黒ボク土が発達しており、この中からは1000年以上前の植物炭化物片が発見されている。草原における火入れの際に燃焼する植物体は炭となって土壌中に蓄積されると考えられるが、その蓄積量がどのくらいなのかは未解明である。本研究では、火入れ地における土壌中の炭素蓄積量を定量化し、火入れによる土壌中への炭素蓄積のメカニズムを明らかにすることを目的する。そのため、火入れ前に植物バイオマスの刈り取り調査と燃焼実験を行い、土壌調査を行った。その結果、傾斜が急だと植物バイオマスは少なくなり、傾斜が緩いと多くなる傾向がみられた。そして、植物バイオマスが多いほど燃焼温度は高くなり、植物バイオマスの燃焼量が多くなる傾向がみられた。しかし、植物バイオマス中の含水率が高いと燃焼温度が低くなる傾向がみられた。また、地上から30 cmまでの土壌中の全炭素密度は微地形や黒色土層の厚さによって異なり、植物バイオマスの燃焼量と土壌中の全炭素密度の関係には正の相関がみられた。ただし、谷地形の下部では植物バイオマスが多いにもかかわらず、土壌中の炭素密度は少なかった。これは火入れの際に雪が残っていたために植物バイオマスの燃焼量が少なくなったためと考えられる。これらの結果から、微地形が全炭素密度に影響していると考えられる。また、有機態炭素に比べて、炭を含む無機態炭素の方が蓄積に貢献している可能性があり、無機態炭素についても検討した。以上のことから、火入れによる植物バイオマスの炭化が土壌中への炭素蓄積に貢献していることが示唆された。


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