| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-702
河川水質は森から海に至る流下過程で様々な土地利用の影響を受けて変化する。これまでの研究では、農地の存在によってNO3などの肥料の成分濃度が上昇することが報告されている。しかしながら、流域全体を対象として、流下過程に伴う河川の一般水質の変化やその要因を明らかにした研究は少ない。
本研究では、和歌山県の二級河川である有田川を対象とした。有田川の流下過程における河川水質の変化とその要因を明らかにすることを目的とし、最上流部に位置する京都大学・和歌山研究林から海までの水質を把握した。有田川の上・中流部は主に森林、中流部にはダムがあり、下流部には市街地やミカン畑が広がる。
採水地点は、周囲の土地利用が変化する本流の12地点に設定し、04年5月から08年5月までほぼ毎月1回の採水を行った。これらの水質データを元に、08年5月から12月の期間には、一部の支流含めて新たに設定した計23地点で5回採水を行った。
4年間の本流観測の結果から、水質変化の顕著な地点がいくつかあり、中流のダム湖では主にDOC、四村川の合流する点でSi、下流部で下六川の合流する点でNO3の濃度が上昇した。また、流域内の地質が異なる四村川、下六川の水質を比較すると、K、Ca、Mg、Siといった岩石の風化によって供給される物質濃度に違いが認められた。下六川流域の水質とGIS(Geographic Information System)による植生データと照らし合わせると、ミカン畑の面積率とNO3濃度の間に有意な正の相関が見られた。以上から、有田川本流には、地質と土地利用の影響を強く受けた支流が流れ込むことによって、本流の水質が大きく変化することがわかった。