| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-703
草原の面積は世界の陸上生態系の約40%を占める。その多くが酪農や畜産に使われている。その為、家畜動物の排泄物が草地の炭素循環に及ぼす影響は大きいと考えられる。本研究では、家畜動物の排泄物の影響を解明するために、「放牧牛が排泄する糞の分布と分解の季節変化」および「1ヶ月当りに糞から放出される二酸化炭素量の推定」を行なった。
調査は、岐阜大学流域圏科学研究センター高山試験地に隣接する牧場に、100m×30mの調査区を設置して行った。牧場は6月〜10月の5ヶ月間放牧されており、調査は放牧開始後1ヶ月おきに行った。調査区内に新たに排泄された糞の個数、位置、重量を測定した。さらに、調査区とは別の場所に糞バックと呼吸測定用の糞を同条件で設置し、糞の分布実験と同様1ヶ月おきに重量変化と呼吸速度の測定を行った。
糞の分布パターンは、短期的にみた場合と長期的にみた場合、異なる傾向を示した。短期的にみると一様分布を示したが、長期的にみると集中分布を示していた。調査区内の糞の供給量は、個数、重量ともに夏季に向かい増加傾向を示した。一方、糞一個の重量変化は、増減を繰り返しながらも減少していた。糞の呼吸量は、時間が経過するほど減少していったが、糞ごとに比較をするとその傾向に違いがみられた。糞の分解速度と糞の含水率は、一般的に関係があるといわれているが、本研究では、分解速度と含水率との間に明瞭な関係は認められなかった。最後に、排泄後の経過時間に伴う糞からの二酸化炭素放出量を推定した。糞の呼吸量は排泄後1ヶ月目が一番多く、5ヶ月分の二酸化炭素放出量を100%とすると、1ヶ月目に放出された二酸化炭素量は約87%であった。また、糞の呼吸量は大きかったが、調査区内における二酸化炭素放出量に換算すると、調査区内のシバ全体の地表面からの二酸化炭素放出量(土壌呼吸量)の約0.19%であった。