| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-706

沿岸域における脱窒活性の時空間変動特性

*千賀 有希子(立正大・地球),奥村 稔,清家 泰(島根大・総合理工)

脱窒は、主に微生物によって駆動し、NO3-をN2へ還元することで系内の窒素を系外へ放出する過程である。したがって水域における脱窒は、一次生産を支配し富栄養化に関わる重要な過程といえる。沿岸域は水域と陸域の境界面にあたり、様々な物質の流入の影響を受ける場である。特に窒素は、人間活動が活発化するのに伴い沿岸域への流入量が増加傾向にあるといわれている。それゆえに、窒素の消失過程である脱窒を把握することは極めて重要であると考えられる。本研究では、沿岸域の堆積物における脱窒の時空間変動特性を知るために、河口域である宍道湖2地点と潟湖である中海3地点を対象にアセチレン阻害法によって脱窒活性を1年間月に1回測定した。そして、脱窒活性と環境因子との関係を検討し、河口域と潟湖の脱窒特性を考察した。

両湖の脱窒活性は、年間通して底層が還元状態である地点を除いて、夏期に最も高い値を示した。脱窒細菌は、NO3-や有機物など基質さえ存在すれば温度に伴って活性化するものと考えられた。また脱窒の空間分布は、鉛直的に堆積物表層部で最も高いという特性を示した。堆積物表層部は基質の供給を受けやすいものと考えられた。平面的にも脱窒は基質の供給を受けやすい地点で高い傾向にあった。これらのことから、脱窒の時空間変動は基質の供給が重要であると考えられた。しかしながら、河口域と潟湖では基質の供給過程が違うことが示唆された。河口域の脱窒は塩分と負の相関を示した。これは主に基質の供給が、基質を含んだ河川水の流入に依存していることを示している。一方、潟湖の脱窒活性は塩分と正の相関を示し、海からの距離が近いほど高かった。このことから、酸素を含んだ海水が流入することによって硝化と有機物分解が促進し、結果として脱窒の基質を供給するものと考えられた。


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