| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-708

河口干潟における物質循環に対するスナガニ類の役割:何をどれくらい摂食しているか?

*中尾拓貴,佐々木晶子(広島大・院・生物圏),吉竹晋平(早稲田大・院・先進理工),中坪孝之(広島大・院・生物圏)

スナガニ類は干潟の代表的な堆積物食者であり、活発に堆積物中の有機物を摂食するため、干潟の物質循環に大きく影響している可能性が考えられる。しかし、干潟生態系におけるスナガニ類の役割を定量的に明らかにした研究は少ない。本研究では広島県黒瀬川河口干潟を調査地として、スナガニ類3種:ハクセンシオマネキ(Uca lactea) 、チゴガニ(Ilyoplax pussila)、コメツキガニ(Scopimera globosa)の摂食内容を質的量的に明らかにし、物質循環における役割を定量的に評価することを目的とした。

まず、摂食した有機物について、微生物バイオマスの指標であるリン脂質脂肪酸(PLFA)分析をおこなった。摂食前の堆積物(0-5mm)と摂食後に排出される泥ダンゴ(pellets)を比較した結果、pellets中の全PLFAは摂食前のもの比べ約50%−60%減少していることが分かった。またバクテリアバイオマスの指標となるPLFAも同様に摂食によって約50%−60%減少していることが明らかになった。

次に、各種類での摂食量をもとに、面積当たりの摂食量を推定した。摂食量の指標としてpelletsを個体ごとに採取し、体サイズ、巣穴直径とpelletsの乾重量との関係を調べたところ、pellets量と体サイズ、巣穴直径には正の相関が見られた。以上の結果をもとに、調査地の巣穴直径と数から面積あたりの摂食量を推定し、物質循環における役割について考察した。


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