| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-713
南九州の二次林の代表的な構成種であるコジイは樹齢50年生頃から幹に腐朽が入り易くなり,風害に弱くなることが知られている。かつて薪炭林として利用されてきたコジイ萌芽林は管理放棄の結果,壮齢林となっているが,今後,これら萌芽林の高齢化がさらに進んだ場合,炭素固定能や更新動態にどのような影響があるのか不明な点が多い。炭素固定能に着目した本研究では,コジイ萌芽林の純一次生産量(NPP)を39年生から57年生までの18年間にわたり計測し,同一林分の幼齢林時のデータとの比較から林齢の増加とNPPの年々変動の関係について考察した結果を報告する。調査地は1960年代にNPPの調査履歴のある熊本市郊外の57年生(2008年当時)の壮齢コジイ萌芽林である。1990年以降,定期的に毎木調査を5回行った(1990年,1994年,1998年,2003年,2008年)。これら毎木調査の結果から群落成長量を算出し,同時期に測定した落葉・落枝量と合わせてNPPを求めた。調査林分は1990年から18年間の計測期間中に2回の大きな台風撹乱を受けたが,被害の形態は若干異なっており,1991年の台風では脱葉が中心であったが,2004年の台風では幹折れが顕著であった。壮齢林のNPPは平均12Mg/ha/yrであり,幼齢林(11〜16年生)の平均13.4Mg/ha/yrに比べてやや低く推移していた。壮齢林では台風撹乱による群落成長量の増加が見られたが,幹への腐朽が進行した50年生以降では,幹折れによる地上部現存量の低下と相まってNPPも減少していた。すなわち,コジイ壮齢林分は幹の腐朽により台風撹乱への感受性が高くなり,幼齢林分よりもNPPの年々変動が大きくなる可能性が高くなると考えられた。