| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-719
森林は温室効果ガスであるCO2の吸収源として期待されており、日本ではその効果を最大限に発揮するため間伐が進められている。間伐は、土壌の理化学性の変化を引き起こし、その結果、森林土壌におけるCO2やCH4 fluxに影響を与えることが報告されている。しかし、このような間伐がガスフラックスに与える影響のメカニズムの詳細は未だ不明である。そこで本研究は、間伐の影響の中でも樹木伐採による根の活性低下に焦点を当てた。根の活性低下は、CO2放出を減少させる。また、土壌中NH4+-NはCH4吸収の制御要因のひとつとして考えられているため、根の活性低下がCH4吸収に間接的に影響を与える可能性がある。このような影響は、樹幹からの距離によって異なることが予想される。そこで、樹幹から50 cmと150 cm離れた位置における樹木伐採前後のフラックスを測定し、フラックスの変化、温度・水分依存性から伐採の効果を評価した。
本試験は名古屋大学演習林に生育する35年生のスギ林で行なった。互いに十分に離れた対象樹を5本選定し、各樹の斜面に向かって上、右、下、左の4方向に、樹幹から50 cm、150 cmの位置にフラックス測定用チャンバーを設置した。2008年5月から11月まで計13回のCO2・CH4 fluxの測定を行ない、7/23にチャンバー内の土壌を攪乱しないように樹木の伐採を行った。併せて、地温、土壌水分、深度別の土中CO2・CH4濃度の観測を行なった。
観測の結果、CO2放出量は伐採により減少し、その減少量は樹木からの距離が50 cmの地点でより大きくなる傾向を示した。CH4吸収量は伐採により変化しなかった。このことより、伐採による樹木根活性の低下はCO2 fluxに影響を与えるが、CH4 fluxには影響を与えないという事が示唆された。