| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-726
粗大有機物(CWD)は森林生態系の炭素収支を考える上で無視できないコンポーネントである。本報告では,複雑地形上に成立した常緑広葉樹二次林におけるCWD量を推定した。対象とした常緑広葉樹二次林は南九州地方に位置する宮崎大学田野フィールド(演習林)内の約90年生といわれる林分である。標高140 mから175 mのシイ,タブノキやイスノキが優占する源頭部小流域に設置されている1 haの方形プロット内の,直径10cm以上のすべての枯枝,枯死木のサイズから体積を求め,腐朽レベルに応じた密度を乗じ現存量を算出した。このプロットは環境省モニタリング1000プロジェクトサイトであり,同プロジェクトのプロトコルに従い毎年毎木調査を行っている。立木密度は約2200本/haであり,地上部幹・枝の現存量は約290 Mg/haであった。CWDの現存量は37.6 Mg/haであり,地上部幹・葉現存量の13%に相当した。この比率は佐藤(2004)の報告による,より成熟した綾の常緑広葉樹林に比べて高かった。プロットの微地形を尾根と谷の2つに区分した場合,面積で43%の谷には地上部幹・葉現存量は21%しか存在しないが,CWDは5割程度が集まっており,地表かく乱の様式を反映していると考えられた。また,回転率(CWD現存量/年あたり枯死量)は約10と計算された。