| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-729

ミズナラとササの細根生産速度と根呼吸速度の季節変化

福澤加里部(京大・フィ),壇浦正子(京大・農),兼光修平(京大院・農)

植生から土壌への炭素フローとしての細根の役割が注目されている。土壌植生系の炭素フローを定量的に評価するためには、細根動態の理解が必要だと考えられる。しかし、細根ターンオーバーや細根生産量・枯死量の定量的評価は十分ではない。本研究では、細根生産・枯死の季節変化を直接観測により明らかにした。また根呼吸速度を細根生産速度と同時に測定することにより、両者の関係について考察した。その中で冷温帯林の代表的樹主であるミズナラと林床に密生するササの細根動態の季節変化を比較した。京都大学フィールド科学教育研究センター北白川試験地において、透明のアクリル製根箱を用いて根箱断面の画像を撮影した。観測は2008年6月4日から12月12日まで1週間または2週間の頻度で行った。画像上の各根の長さを測定し、細根生産速度を求めた。根箱をチャンバーとしてミズナラの根呼吸速度、ササの地上部地下部合計の正味呼吸速度および暗所での呼吸速度を測定した。そしてササの両呼吸測定の差を光合成速度とした。ミズナラの細根生産速度は地温の高い7・8月に高く9月以降に低下した。ミズナラの根呼吸速度と細根生産速度の季節性は同調し、また根呼吸速度は地温の上昇に伴って指数関数的に上昇した。一方ササの細根生産速度は9月に高まった。その時期にはササ地上部の葉の生産速度と光合成速度が上昇した。このようにササとミズナラでは同じ環境条件に置いても細根動態の季節変化パターンが異なることが明らかになった。


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