| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-730
現在大気中のCO2濃度は急激に上昇している。植物―土壌間の物質循環系が高CO2下でどのように変化するかを理解することは、将来の地球環境を予測する上で不可欠である。近年高CO2の長期的な影響を調べるために、天然CO2噴出地を用いた研究がおこなわれるようになってきた。天然CO2噴出地とは地下水に溶け込んだ火山ガス由来のCO2が地表に沸き出す場所であり、そこでは植物および土壌が長期間高CO2にさらされたときの生態系レベルの応答を調べることが可能である。本研究では八甲田山系田代平の天然CO2噴出地周辺に優占するオオイタドリを対象として、落葉の分解にともなう葉の物理化学的性質の変化を調べた。なお、大気CO2濃度に加えて光条件によっても葉の性質は変化するため、CO2濃度と光条件の2要因に着目した。2007年11月に高―低CO2および強―弱光を組み合わせた4サイトから落葉を回収し、それぞれのサイトにリターバッグを設置した。その後2008年6,8,10月にリターバッグを回収し、リター重量および窒素濃度を測定した。
この結果、リター重量の減少は高CO2サイトで大きく、かつ弱光由来のリターで大きかった。いずれのサイトでも強光由来のリターの窒素濃度は上昇し続け、炭素/窒素比は減少し続けていたのに対し、弱光由来のリターの窒素濃度および炭素/窒素比は6月以降ほぼ一定になった。弱光由来のリターほど初期の葉重/葉面積比が小さく窒素濃度が高かったため、分解しやすく、無機化が早く始まっていると考えられた。また、それぞれのリターの由来サイトにおける分解速度を比較すると、CO2濃度と光環境の影響には交互作用が見られ、弱光・高CO2のリター重量は1年で45%に減少していたのに対し、他のサイトのリターは80%程度残っていた。以上の結果に基づいて、大気CO2濃度の上昇が土壌分解系に与える影響を考察する。