| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-733
土壌生態系に入る炭素は、地上部からのリターと地下部の根からの2つの経路からなる。炭素は土壌生態系のエネルギー源となるため、土壌生態系の構造を理解する上で、これら2つの経路がどの程度土壌生態系の維持に貢献しているかを把握することは重要である。本研究では、草地から地上部を維持したまま非破壊で土壌を切り取り、地上部の現存量を制御することで、根からの炭素の流入量を制御した。土壌を直径10cm深さ7cmの塩化ビニルパイプで切り取り、地上部10cmをアクリル円筒で覆いスクリーンメッシュをかぶせ蓋をした。マイクロコズムの底は、ポーラスプレートで覆った。処理区は地上部をそのまま残す区(P100)、マイクロコズムの半分の面積の植物を取り除く区(P50)、植物を取り除く区(P0)の3つを設けた。マイクロコズムは2000年11月30日に野外に設置し、翌年9月20日に実験を終了した。また植物除去が土壌生態系に与える影響を把握するために実験終了時に、根量、土壌微生物バイオマス、K2SO4抽出中の溶存炭素、線虫個体数を測定した。またコントロールとして実験終了時に周辺土壌の植物地上部重、根重、微生物バイオマス、線虫を測定した。植物地上部重はP50区でP100区の63%、根重はP0、P50でP100のそれぞれ、6%と66%であり、地上部、地下部とも現存量は制御出来た。微生物バイオマス、抽出液中の溶存炭素は、コントロール区が他の区より有意に高い値を示し、植物除去の処理の影響は見られなかった。一方線虫個体数は、P0、P50区で、コントロール区よりも低い値を示した(p<0.05)が、P100区とコントロール区は同程度であった。地上部を除去しても、微生物バイオマス量は変化しなかったが線虫個体数は減少したため、土壌生態系の活性は根からの炭素流入量の減少により低下したと考えた。