| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PB2-737
鳥取砂丘では近年砂丘の草原化が問題となっている。既に、砂丘への植物の侵入・定着には適度な砂の堆積が必要であり、砂の移動が環境要因として重要であることが明らかにされている。しかし、陸上生態系においてしばしば植物の成長の制限要因となる窒素に関して、非常に貧栄養であるとされる砂丘に植物が侵入・定着する機構には多くの不明点が残されている。演者らはこれまでに、砂丘における窒素の分布をその形態別に調査し、植物が利用可能な無機態窒素現存量の分布が空間的に不均質であり、特に硝酸態窒素について現存量が非常に大きい地点が見られることを示した。
本研究では、砂丘における窒素の分布に関して、上述のような硝酸態窒素現存量の大きい地点に着目し、その空間的スケールと時間的な継続性の有無を明らかにすることを試みた。鳥取砂丘において海水の影響を直接受けないと考えられる地点に、幅1m×長さ50mのプロットを設置し、1m×1mに分割したサブプロット内の形態別の土壌中の窒素現存量と植生被度を1月・4月・7月・10月の計4回測定した。
その結果、総窒素現存量の空間的変動は比較的緩やかであり、季節を通じて現存量が大きいサブプロットの位置は変化しなかった。それに対して、硝酸態窒素現存量は空間的変動が大きかったが、硝酸態窒素現存量の大きいサブプロットに隣接したサブプロットの現存量は平均値以下である場合が多かった。これにより、硝酸態窒素現存量の大きい地点のパッチサイズは長さ1m以内である場合もあることが示された。アンモニア態窒素現存量の空間的変動は硝酸態窒素に比較して小さかったが、7月にはアンモニア態窒素現存量が特に大きい地点が見られた。最も優占する植物はカワラヨモギであったが、その被度と土壌中の窒素の形態および現存量に明瞭な関係は認められなかった。