| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-741

スギ緑葉の分解における窒素固定の役割−間伐による林内環境変化の影響−

*平井敬三,小野賢二(森林総研東北),金子智紀(秋田県森林技セ),山中高史,金子真司,高橋正通(森林総研),野口享太郎(森林総研四国)

スギ落葉では窒素固定活性がF2層で特異的に高いことが知られている。また、分解初期には残存葉の窒素含有率が高まる窒素不動化が一般的にみられる。人工林管理で現在増加している切り捨て間伐では、林地に還元された緑葉の多くは地面に接地しない状態で存在する。そこで、地面と空中に緑葉を入れたリターバッグを設置し、分解に伴う残存葉の窒素固定活性と窒素含有率の変化を1年間追跡し、間伐による分解や窒素動態への影響を検討した。対象は茨城県城里村の桂試験地(間伐林分)と秋田県大館市の長坂試験地(間伐林分と非間伐林分)で、約40年生のスギ人工林である。

間伐林分では、間伐1年目の分解速度は両試験地とも空中と地表設置の違いはなかったが、地表設置の方が窒素含有率の増加は大きく、窒素固定活性が高いことから、窒素不動化には窒素固定の役割が大きいと考えられた。分解速度は長坂試験地の方が桂試験地より速かった。長坂試験地では冬季にも分解が進んでいることから、この期間に積雪中で比較的湿潤な環境下におかれるため分解が促進されることが考えられた。

間伐林分と非間伐林分に設置した長坂試験地では、間伐林分の方が分解速度は遅く、窒素含有率の増加が地表設置で小さかった。採取時の水分含有率は間伐林分の方が低いことから、地表を含む林内の水分環境が間伐によって低くなるため、分解が遅くなると考えられた。

このように、分解初期には、地表と空中設置では落葉分解速度に違いは見られないが、窒素不動化にいては窒素固定活性の寄与が大きいこと、間伐による樹木密度の減少は窒素吸収量を低下させるが、林地に多量に還元された緑葉の分解速度を遅くすることで、余剰窒素の供給を防ぐシステムとなっていることが考えられた。


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