| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC1-333
湖沼沿岸には様々な湖岸形態が存在し、それに対応した底生動物相が形成されることが知られている。また、底生動物は沿岸食物網における主な一次消費者であり、生産者によって生産された有機物を高次消費者に輸送する役割がある。よって、湖岸の空間構造は底生動物を介して食物網にも影響を及ぼすと考えられる。そこで本研究では、琵琶湖湖岸の植生帯であるヨシ帯と砂質帯における底生動物群集の構造および餌資源を比較することにより湖岸の空間構造が底生動物群集に与える影響を明らかにすることを目的とした。
調査は2007年9月から11月にかけて琵琶湖湖岸のヨシ帯3地点と砂質帯3地点で行った。また、ヨシ帯3地点のそれぞれにおいて内部と周縁部の2点で調査を行った。調査項目は環境要因測定(溶存酸素量、粒度など)と生物定量採集および採集した生物の炭素・硫黄安定同位体比分析である。
始めに各地点の環境要因(溶存酸素量、粒度など)を比較すると、砂質帯およびヨシ帯周縁部とヨシ帯内部で異なる傾向を示していた。次いで各地点における底生動物のバイオマスを比較すると、砂質帯およびヨシ帯周縁部では主に巻貝および二枚貝が優占し、ヨシ帯内部では巻貝だけではなくユスリカ科幼虫やミミズ類も優占していた。また、各地点における底生動物の餌資源を見ると、砂質帯は付着藻類および植物プランクトンであり、ヨシ帯周縁部ではそれらに加えてヨシ由来のデトリタスが含まれていることが分かった。一方で、ヨシ帯内部では餌資源として付着藻類、植物プランクトンおよびヨシ由来のデトリタスだけではなく細菌も含まれている可能性が考えられた。本発表では、これらの結果を踏まえて湖岸の空間構造が底生動物群集に与える影響について議論したい。