| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC1-334
一般に、限られた資源を利用する種は互いに排他的になり、共存できない。しかし、タンガニイカ湖では巻貝の殻内で繁殖するシクリッド科魚類4種の究極的な共存(最大350個体/m2)が見られる。これはLamprologus callipterus(以下Lc)の雄が貝を運び集めて構築した巣(<150貝)で生じ、他種はこの貝を利用する。我々はこの“潜在的な競争種”の共存機構を理解するために、特に以下の3つの疑問を設定し、共存パターンの異なる4個体群(共存種なし、Telmatochromis vittatus(以下Tv)と共存、Tv・Neolamprologus fasciatus(以下Nf)と共存、Tv・Nf・N. brevis(以下Nb)と共存)で調査を行った;(1)これらの種は本当に競争種しているのか?(2)なぜ他種が巣を利用できるのか?(3)この共存は寄生か共生か?
どの個体群でもLcは大貝を好んで集めた。大貝はどの個体群でも稀少だったが、NfはLcと同じ大貝を繁殖に利用した。NbとTvは彼らよりも小さい貝を利用した。しかし、共存種のいない個体群では貝が小さく、そのためLcは他個体群でNbやTvが利用するような小さな貝で繁殖した。それゆえNfは競争関係にあるが、他の2種は資源量・質に依存して競争関係が決まる。いずれの個体群でもLcが決して利用しない小貝が巣から見つかり、これらの貝の一部は他種によって利用された。巣にある貝のうちこの小貝が占める割合は、共存のない個体群で有意に低かった。このことから、他種の巣利用はLcの積極的な活動によってもたらされるかもしれない。そうだとすると、Lcは他種から何らかの利益を得ているのだろう。本研究は、この資源を共有する複数種の共存は、資源量・質に応じて共生か排他が決まる状況依存の共生であることを示唆する。