| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC1-338
高山湖沼は富栄養化や温暖化などの影響を受けやすい脆弱な生態系として、近年その生態系変化が危惧されている。しかし、高山湖沼の生物群集を対象にした長期にわたる定期調査はほとんど行われておらず、人為的な活動の増大と共に高山湖沼の生物群集がどのような影響を受けているのか、全く判っていない。そこで本研究は、八幡平国立公園内にある森林に囲まれた蓬莱沼と山頂に位置する八幡沼を対象に,堆積物に保存されている植物プランクトン由来のカロチノイド色素と動物プランクトン遺骸を調べ、過去300年にわたる動植物プランクトン群集の変動を復元した。
その結果、蓬莱沼では、環境条件の指標である総リン・総窒素量が1950年以降増大し、植物プランクトンも50年以降、2-12倍に急激に増加していることが判明した.さらに,動物プランクトンのAlona、Chydorusも1950年以降それ以前と比べ2-3倍増加し、Daphniaは1980年代以降、2-6倍に増加した。これは、蓬莱沼の動植物プランクトンの動態がBottom-up的な制御を受け、近年大きく変化しつつあることを示唆している。
一方、八幡沼は、蓬莱沼と比べ動植物プランクトンの密度は全般に低く、総窒素量は1990年以降僅かに増加するが、総リン量は大きな変化は認められなかった。植物プランクトンは1990年以降、4-6倍増加するが、動物プランクトンのAlona、Chydorus、Daphnia共に大きな変化は認められなかった。このように両沼は僅か1.3kmしか離れていないが、動植物プランクトンの長期動態は大きく異なっていた。このような違いが生じた原因について考察する。