| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-341

山形県畑谷大沼における Daphnia複数種の長期変化:Hybridはいつから形成されたか?

*粟野将,槻木(加)玲美,牧野渡,松島野枝,河田雅圭(東北大・生命),小田寛貴(名 大・年代測定センター),占部城太郎(東北大・生命)

Daphniaは通常単為生殖を行うが、環境悪化で有性生殖を行い休眠卵をつくる。その際、近縁の複数種の存在で、有性生殖によりHybridを形成する事が知られている。山形県畑谷大沼は極希にみられる例外的な湖沼であり3種のDaphniaが生息している。このうちD. galeataD. dentiferaは近縁種でHybridを形成することが知られており、畑谷大沼においてもHybrid個体が見つかっている。しかし、このようなHybrid個体群の起源や維持について不明な点は多い。幸いなことにDaphniaの休眠卵の一部は孵化せず湖底にそのまま堆積するため、堆積物の休眠卵を調べる事で種交代やHybrid出現時期など過去の変遷・履歴を追う事ができる。本研究は畑谷大沼を対象に、Hybridを含むDaphnia複数種の長期変化を復元する事を目的に行った。調査は2008年10月に畑谷大沼の最深部において、コアサンプラーを用いて底泥を採取した。これを表面から1cmごとにスライスし、210Pbと137CSによる堆積年代推定を行い、Daphniaの休眠卵を抽出した。抽出した休眠卵はミトコンドリア12SrRNA遺伝子及び核のITS領域のDNA配列を調べ、Hybridを含む種の同定を行った。また、湖周辺の環境変化は文献や周辺住民の聞き取りにより調べた。調査の結果、堆積物中のDaphniaの休眠卵の密度は1920年代から除々に増加しオオクチバスが侵入した1980年代に急激に増加した事がわかった。発表では、DNA解析による種ごとの遷移パターンやHybridの有無と出現時期、それら変遷と環境変化との関係について報告する。


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