| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-347

里山におけるシカ被食圧分布

*磯崎昌代,小池文人(横浜国立大学・環境情報学府)

近年におけるシカの分布拡大・個体数増加に伴い,里山地域においてのシカによる農作物被害軽減のための景観要素の最適配置計画や,希少植物が生存できる地域の抽出等の研究が必要となっている.シカによる食害では,同所的にある植物であっても嗜好性が相対的に低ければ食害を受けないし,同種の植物であってもシカの被食圧が低い場所では食害を受けないと考えられる.本研究では里山景観の中でシカの植物への嗜好性を定量化し,これをもとにシカの被食圧を測定し,地域の景観の中での被食圧の空間分布を明らかにした.北海道道東の1km×1km(シカの行動圏内)に針広混交林やカラマツ植林地,畑,牧草地,民家,道路等が混在する地域を200mメッシュに区切り,指標種植物の食痕の有無を調査した.また森林のみについて高い空間解像度で調べるために林内に50mセグメントを複数箇所設置し,同様の調査を行った.メッシュ内の被食圧は一定と仮定して指標種植物の種ごとのシカによる嗜好性値を計算した.半数の植物個体が食害を受ける嗜好性のレベルを被食限界値として被食圧の指標とした.被食圧が高いほど被食限界値が小さく,嗜好性の低い植物まで食べられる.嗜好性値の計算では推定された嗜好性値の高い植物が各メッシュで共通して多くの被食を受けており,今回の嗜好性の計算は妥当であることが確認された.食害を受ける限界嗜好性値は森林で低く,嗜好性値の低い植物まで食べていた.被食圧は森林で高いことになる.畜舎や住宅の周辺では限界嗜好性値が高く,シカは人間活動を忌避していると考えられる.林内に設置したセグメントにおいては同様に人間活動を忌避する傾向も見られたが,森林の奥では限界嗜好性値が比較的高くなり,林縁周辺で低くなっていた.被食圧は林縁で高いことになる.また尾根沿いのセグメントで被食圧が高い傾向にあった.


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