| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-349

栃木県奥日光におけるコテングコウモリのねぐらの空間構造

*渡邉眞澄(東京農工大・農),吉倉智子,上條隆志(筑波大・院・生命環境),安井さち子(つくば市並木)

森林棲コウモリの生息環境として、自然林が重要であると言われている。その理由の一つとして、自然林には樹洞などのねぐら資源が豊富であることが指摘されている。しかし、我が国では、森林棲コウモリのねぐらに関する研究そのものが少なく、それぞれの種のねぐらの空間的特性について十分明らかにされていない。本研究の対象とするコテングコウモリについても、北海道での研究例(Hirakawa & Kawai,2006)以外はほとんどない。本研究では、本州中部栃木県日光において、コテングコウモリの夏期と秋期の日中のねぐらを明らかにすることを目的とした。

2008年7〜10月、奥日光において、雌3個体・雄3個体の計6個体のコテングコウモリに発信器を装着し、ラジオテレメトリー法によるねぐら探索を行った。その結果、47ヶ所のねぐら位置情報が得られ、8ヶ所のねぐら部位が特定された。特定されたねぐら部位は、葉群内(n=1)、枯葉の中(n=3)、樹洞(n=4)であった。コテングコウモリは樹冠部を多く利用しており、頻繁にねぐらを移動することが明らかとなった。一方で、ねぐらとなった地点は個体毎に特定のエリア内に集中しており、何らかの基準により選択している可能性が示唆された。

北海道の研究例では、ササの優占する下層植生付近にある枯葉内でねぐらが発見されているが、本調査地においては下層付近での利用は全くみられなかった。これは、本調査地がニホンジカの食害によりササなどの下層植生が極めて乏しいこと、またササの種類が北海道の研究例と異なることなどが関連していると考えられる。コテングコウモリのねぐらには地域的な相違があり、森林内の空間構造にねぐらの選択性が左右されている可能性が示唆された。


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