| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC1-358
ゲンゴロウ類は、高次の捕食者であり、環境選択性が強く、減少傾向が著しいため、淡水生態系における生物多様性の指標種として有用とされてきた。本研究では、ため池、水田、水路といった里地・里山の水辺環境に生息するゲンゴロウ類を対象として、その生息環境要因や生息場所の空間構造を明らかにすることで、生物多様性指標としての妥当性を検討した。
生物多様性の高いため池群の残存する、石川県能登半島の平野部にあるため池219ヶ所のうち、貯水されており調査可能な128ヶ所において、5種の中・大型の絶滅のおそれのあるゲンゴロウ類(ゲンゴロウ、クロゲンゴロウ、マルコガタノゲンゴロウ、シャープゲンゴロウモドキ、マルガタゲンゴロウ)の生息の有無を記録した。生息環境要因については池の面積、水質(pH・EC)、管理の有無、護岸の近代化の有無、浮葉植物の被度、大型魚や侵略的外来種の有無、餌生物のサイズ別の個体数、生息する動物種数および植物種数を、生息場所の空間構造については各ゲンゴロウ類の移動分散能力を考慮した上でため池間の連結性を算出した。これらの要因と5種それぞれの生息の有無との関係を一般化線形モデルを用いて解析した。
その結果、動物の種多様性が5種のすべてで、また、ため池間の連結性がゲンゴロウを除く4種でそれぞれ重要であることが示された。他の環境要因としては、池の面積がマルコガタノゲンゴロウの生息に寄与していた。これらの結果から、中・大型のゲンゴロウ類は、ため池における水生動物の種多様性や生息地間のネットワーク構造の指標となりうることが示唆され、里地・里山の淡水生態系における生物多様性の種レベルでの指標として有効性が高いと思われる。一方で、ゲンゴロウ類の保全上も、多様な水生動物を有する池やそのネットワーク構造の維持が重要であることが示された。