| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC1-375
冬季にムギを作付けする水田二毛作は、土地の有効利用、冬季の土壌流亡を防ぐばかりではなく、多くの生物に越冬場所を提供するなどの機能を有する環境保全型の農業形態である。またムギの作付けのため、冬季に湛水は行われず、田植えも二毛作地帯は一毛作地帯に比べて1ヶ月以上遅い6月中下旬に行われるという特徴を有する。この二毛作において、ムギ収穫後、ムギわらを水田にすき込むことは、有機物の有効利用や土壌の地力を維持することができ、さらに農地の環境保全機能を高めているであろう。このようなムギわらのすき込みは、未熟な有機物を土壌に供給することで、ユスリカなどの腐植性植物を餌とする昆虫を増殖させ、それがクモなどの捕食性節足動物の餌となる。さらに、これらの天敵が害虫の防除効果を発揮している可能性がある。このように一毛作と二毛作の作付け体系の違いは、水田における動物群集相に大きな影響を及ぼしていると考えられる。しかし、その実態はほとんど明らかになっていない。
そこで、埼玉県行田市の米麦2毛作地帯において、冬季にムギを栽培しムギわらを水田にすき込む二毛作水田(殺虫剤散布区と無散布区の2条件)とムギの作付けを行わずイネのみを栽培する一毛作水田において、主要害虫、クモ等の捕食者、ユスリカ等捕食者の代替餌となりうる種の発生を調査をした。
7月下旬の調査の結果では、二毛作水田では、殺虫剤の散布の有無に関わらずアシナガグモやユスリカ類が多発していた。一方、ウンカ類は、殺虫剤を散布されている二毛作水田で多かった。またトビムシは、一毛作水田で多発することが示された。このように、二毛作や殺虫剤の散布は、水田における節足動物群集相に大きな影響があることが示唆された。