| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-748

視覚の操作:オオニワシドリのあずまや構造と飾りの関係

*遠藤千尋(京大・生態学研究センター), 江口和洋(九大・理), 上田恵介(立教大・理)

繁殖ディスプレイのための構造物であるニワシドリの「あずまや」は、子育てのための巣と異なり、みられることを意図した構造物である。あずまやは上空からみたとき、また近距離で近づいたときにどのようにみえているのだろうか。

オオニワシドリChlamydera nuchalisのあずまやは、毎シーズンつくりかえられる。調査地内にあずまやは数百メートル以上離れて点在しており、各あずまやはほぼ同一のエリア内に、毎年つくられているが、場所は、昨シーズンのもののすぐそばにつくられることもあれば、数十メートル離れた場所につくられることもあり、その環境は、薮の中のギャップから、比較的高木の下、倒木の下など、明るさ、見はらし(openness)などが異なっている。あずまやの周囲に並べられる貝殻やガラスなどの装飾品は再利用されるが、貝殻の量や並べ方はあずまやごとにちがいがある。あずまやの制作過程は不明で、複数のオスが関与している可能性があるが、ひとつのあずまやは、交尾シーズンには1個体のオスによって独占されるようである。

これまで、ニワシドリのあずまやについて、あずまや構造の対称性、大きさ、装飾品の中の緑の実の量などが、交尾成功と関連があるとされてきた。しかし実際には、オスはあずまやでダンスも行い、最終的にメスがオスの何を選んでいるのかは、不明な点が多く、ニワシドリ科での統一見解も得られていない。

今回の発表では、2年分のあずまやのデータを用いて、周囲の環境の中でのあずまやの見え方が、あずまやの構造と飾りの並べ方によって異なるのかどうかを、みる位置を変えて検討することにより、オオニワシドリのあずまやと飾りが視覚的にどのような機能をもつのかを探る。


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