| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC2-752
チョウのオスは配偶縄張りを巡って争う。彼らの闘争は2頭が円を描くようにお互いの周りを飛び続けて、先に切り上げた方が敗者となる持久戦である。この間に相手を物理的に攻撃することはほぼないので、どのように闘争が決着するかは明らかでなかった。メスアカミドリシジミを材料にしたこれまでの研究から、争っている縄張りを占有していた期間の長い個体が闘争に勝ちやすいことが分かってきた。その場所に『慣れる』ことが、チョウの闘争モチベーションを高め、闘争結果に重要な影響を及ぼすのだろう。
さて、このようなルールで闘争するならば、成虫シーズンの初期に縄張りサイトに飛来した個体がその後も縄張り争いにおいて優位になると考えられる。なぜならば、このような個体は空の縄張りに一番乗りできるので、ライバルが現れるまでの期間、縄張りを占有することが保障されており、したがって闘争が起こる時点で縄張りを占有した期間が相手よりも長いからである。この仮説の正否を確かめるため、野外調査地で本種を個体識別して、成虫シーズンを通して縄張り行動の観察を続けた。予測されたように、早い時期に現れた雄がその後も高い確率で縄張りを保持していた。
雄性先熟はチョウでは広く知られている。今回の結果から、早く縄張りサイトに到着してその後の配偶縄張りを巡る争いで優位になることも、雄性先熟の進化的意義の一つと考えられる。