| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC2-761
多くの動物群において多様なコミュニケーション・ツールによって種認識や求愛、闘争行動が行われており、そのようなコミュニケーションの機能と進化は、種内及び種間相互作用を紐解き生態系ネットワークを理解する上で欠かすことのできない重要なテーマである。ヤモリ類は爬虫類のうち音声コミュニケーションを行う点で特徴的であり、いくつかの視覚ディスプレイを含めた多様な行動レパートリーを有する。ミナミヤモリGekko hokouensisとヤクヤモリGekko yakuensisは近縁の小型夜行性ヤモリで、共に屋久島に分布する。近年の研究によってミナミヤモリが移入種であり、在来種であるヤクヤモリと交雑を起こしていることが示された。これら2種の行動生態について詳細に調べることは、交雑のメカニズムの解明の糸口となると考えられる。そこで、種内及び種間における室内での対面行動実験によって、個体間の社会行動を無人撮影し行動と音声の解析を行った。その結果、2種の社会行動のレパートリーを明らかになり、それらが両種にほぼ共通していることが示された。観察された行動は11のカテゴリに分類され、各行動を変数とした主成分分析を行った。その結果、種内及び種間に行動学的な差異がみられた。両種共に行う雌特有の行動が明らかになり、ヤクヤモリは闘争行動を多く行う傾向があることが分かった。また、両種の鳴き声の構造に違いがみられ、ミナミヤモリは音声コミュニケーションを発達させている可能性が示された。以上の結果から、社会行動にみられた差異の生態的意義について考察する。