| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-771

巣を持たないハチによる中心点採餌行動〜ツチバチの雄に見られる生息地帰還習性について〜

*谷聡一郎,上野高敏 (九大院 生防研)

昆虫における中心点採餌行動は,営巣性を持つ種の雌において数多く知られているが,非営巣性昆虫についてはあまり知られていない.今回,営巣習性のない単独性の寄生蜂,ツチバチにおいて,雄バチが生息地帰還習性を持ち,中心点採餌様の行動をしているという事が明らかになったため,ここに報告する.

ツチバチ類の雄には,交尾相手を探すために生息地範囲内を巡回するという習性が知られているが,これについて調査を行ったところ,これらの雄バチは生息地に非常に強い執着を示し,離れた場所からでも元の生息地へ帰還する事が示唆された.そこで,これについて確認するため,キオビツチバチの雄を用いて標識再獲法による実験を行った.まず,生息地から300m離れた場所で,雄バチ22匹を放したところ, 14匹(64%)が帰還した.次に,互いに800m離れた2つの生息地において,片方のハチ10匹を,もう一方に放したところ, 4匹(40%)が800mの距離を帰還し,放虫した生息地での定着は確認できなかった.同様の実験を他のツチバチ4種でも行ったところ,全ての種で60%以上,最大で100%の帰還が確認できた.また,これらの雄バチが実際に帰還能力を用いて餌場と生息地を移動しているかについては,オオモンツチバチを用い,訪花地点と生息地での標識再獲法によって確認した.この結果,生息地から花に飛来した5匹のうち,4匹(80%)が再び生息地で確認された.

中心点採餌行動は,社会性を持つ種に多く見られ,その多くが子の保育を目的としたものであるが,ツチバチの中心点採餌様の行動は,交尾戦略と関わっていると考えられた.今後更に調査することで,中心点採餌行動についての新たな側面を提案できるかもしれない.


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