| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-776

ヤマトシロアリ属に感染するイリデッセントウイルスについて

*寺崎慧介,北出理(茨城大学大学院理工学研究科)

イリデッセントウイルス(Iridescent Virus)は節足動物に感染する病原性ウイルスの一つであり、ガ、ガガンボ、ミツバチ、コオロギなどの昆虫で感染が確認されている。顕著な特徴として、感染部位が乳白色〜淡青色の虹色(Iridescence)を示すことが挙げられる。

シロアリはそのすべての種が真社会性で、集団生活をしている。通常、シロアリの体色は乳白色であるが、日本に生息するヤマトシロアリ Reticulitermes speratus、オキナワシロアリ R. okinawanus、ヤエヤマシロアリR. yaeyamanusでは、まれに体の一部が淡青色を呈する個体を確認できる。淡青色を呈する部位は胸部と腹部で見られる。ヤマトシロアリ R. speratusの淡青色個体を電子顕微鏡で観察したところ、ウイルス状粒子が確認できることから、ヤマトシロアリ属に見られる淡青色個体は、イリデッセントウイルスの感染によるものである可能性が考えられる。

本研究では、まずヤマトシロアリ属3種の淡青色個体から、DNAを抽出し、MCP(Major Capsid Protein)遺伝子を増幅するプライマーを用いてPCRを行った。このうち、ヤエヤマシロアリ R. yaeyamanusでは、他の節足動物と同様に約400bpの配列の増幅が確認され、これをダイレクトシークエンスによって配列決定した。系統解析の結果、この配列は、ニカメイガ Chilo suppressalisに感染するイリデッセントウィルスと姉妹群になることが示された。シロアリでのこのウイルスの感染報告の例はこれまでになく、本研究が初めての報告である。さらに、秋田県秋田市と茨城県東海村の2地点でヤマトシロアリ R. speratusの野外での淡青色個体の出現頻度を調べた結果についても報告する。


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