| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-778

ヨモギをめぐるヨモギハムシとアリ・アブラムシの関係について

*近藤泰玄(信大院・工), 藤山静雄(信大・理)

長野県松本市・美鈴湖の周辺では、ヨモギハムシ・アリ・アブラムシの3種がヨモギ上で活動している。ヨモギハムシとアブラムシは同じヨモギ上にいることが多いが、アリとアブラムシがいるヨモギ上では、ヨモギハムシはほとんど確認できない。ヨモギハムシはヨモギを食草とする昆虫で、同じ餌資源をめぐりアブラムシと競争関係にあると言える。もしアリがヨモギハムシをヨモギ上から排除するならば、アブラムシに対しての間接防衛をしている可能性が考えられる。そこで、アリがアブラムシのいるヨモギ上からヨモギハムシを積極的に排除しているかどうかを確かめるため、室内実験を行った。アブラムシ・アリが活動しているヨモギにヨモギハムシを放った場合、ヨモギハムシは高い確率でヨモギ上から落下した。一方でアブラムシだけのヨモギでは、ヨモギハムシはヨモギから落ちることはなかった。また、プラスチティック容器内にヨモギハムシを放ち、そこにアリのみ、またはアリとアブラムシを導入した実験では、アブラムシが存在する場合の方が、ヨモギハムシとアリだけの場合よりもアリの攻撃頻度が高かった。以上より、アリはアブラムシがいるヨモギ上ではヨモギハムシを積極的に攻撃・排除していると考えられた。3者の間には明確な「食う食われる関係」はないが、アリによる干渉的なヨモギハムシの排除は、ヨモギを舞台とした動物群集において、新たな生物間相互作用の一例といえる。複雑な生物間相互作用解明は、環境保全や生態系の研究とって非常に重要である。干渉的な相互作用は食う食われる関係よりもわかりにくいので、今まで十分に評価されてこなかっただろう。生物間相互作用は今回のような例を含めて、総合的に評価していくべきだと考える。


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