| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC2-779
移動生態学の分野では、近年、動物の探索行動パターンについて様々な理論的・実証的研究が進められている。その中で、ランダム・ウォークの一つであるLevy walkが最適な探索行動戦略として注目されている。Levy walkとは、移動距離の確率分布が分布の裾が長いべき乗分布にしたがうもので、特徴的な移動パターンは多数の短距離移動の間に散発的な長距離移動を示すことである。この移動パターンは動物が探索する資源が、それが知覚できる範囲外にランダムに広く分布している環境において最適な戦略となると言われている。現在まで、トナカイやアザラシなど数種の動物がLevy walkにしたがう移動をすると報告されている。
遠洋水研では、ミナミマグロを対象に2001年よりアーカイバルタグを使用した標識放流を実施している。アーカイバルタグ(以下、タグ)とは、カレンダーと時計を内蔵し、魚の体温、水温、水深及び照度(緯度経度を推定)を記録できる標識である。これまでケープタウン沖及びオーストラリア南西沖の海域で401尾にタグを装着、放流し、現在までに17本のタグが回収されている。これらのデータより、ミナミマグロは水平的にも鉛直的にもかなり広い分布域を持つことが明らかになった。しかし、その移動パターンについての解析は十分に行われておらず、また他の魚類を対象とした研究事例もほとんどない。
本発表では、タグから得られた水深データを使い、ミナミマグロの鉛直移動がLevy walkにしたがうか解析し、その生態的意義について考察する。