| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC2-780
寄生蜂は、産卵する寄主を効率的に探索するために、寄主の匂いや寄主の利用する植物の匂いなどを利用することが知られている。多くの寄生蜂では寄主に対する産卵を経験すると、匂いと産卵経験との連合学習により行動を柔軟に変化させ、産卵を経験した寄主に対する選好性を増加させる。また、自分が寄主として利用し羽化した寄主に対して選好性を示すことも報告されている(HHSP:Hopkins' host-selection principle )。今回は、寄生蜂ゾウムシコガネコバチ (Anisopteromalus calandrae)を用いて近縁な2種のマメゾウムシ幼虫(アズキゾウムシ Callosobruchus chinensis, ヨツモンマメゾウムシ C. maculatus )に対する選好性が生育寄主や羽化後の産卵経験によってどのような影響を受けるか調べた。また、ゾウムシコガネコバチをアズキゾウムシとヨツモンマメゾウムシで維持した2系統のゾウムシコガネコバチを用いて、維持寄主の影響についても検討した。
その結果、ゾウムシコガネコバチは羽化後の産卵経験によって2種マメゾウムシへの選好性を大きく変化させるが、生育寄主や維持寄主が選好性に与える影響は小さいことが分かった。さらに、寄主からのアセトン抽出物を用いた実験により、ゾウムシコガネコバチが豆内の2種のマメゾウムシを匂いによって判別していることを確かめた。アズキゾウムシとヨツモンマメゾウムシはゾウムシコガネコバチの寄主として同程度の価値があると考えられるにも関わらず、産卵経験により選好性が一方の寄主に偏る。これらの結果から、ゾウムシコガネコバチにおける匂い学習と効率的な採餌行動、またそれらが寄生蜂-寄主の個体群動態に与える影響について考察する。