| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-786

ヤドカリのオスの配偶者選択

*和田哲, 安良城百絵, 竹下文雄 (北大・院・水産)

実効性比がオスに偏っている生物でも、配偶行動に大きなコストがかかる場合や、オスにとって配偶可能なメスの数が限られている場合などに、オスによる配偶者選択が期待できる。ホンヤドカリ属のオスは、産卵間近なメスを見つけると、そのメスが背負っている貝殻の縁を掴んで持ち歩く交尾前ガード行動をおこなう。オスのガード時間は、性比やメスとの遭遇頻度などの条件によって変化するので、オスは、ある特定のメスをガードする/しないという配偶者選択をおこなっており、その選択基準は可塑的に変化すると考えられる。それでは、オスが2個体の成熟したメス(ガードすべきメス)と出会ったときには、配偶者選択するのだろうか? この状況で、ホンヤドカリのオスは明確な配偶者選択を示さないことが先行研究で示唆されているが、他種で研究された例はない。

テナガホンヤドカリは、ホンヤドカリよりもオスの配偶者選択が強く期待される生態的特徴を持つ。ホンヤドカリのメスは数ヶ月にわたって複数回産卵するが、テナガのメスの産卵期は1ヶ月間であり年1回しか産卵しない。テナガのメスのクラッチサイズはホンヤドカリ以上に体サイズと強い相関を持ち、一方でテナガのオスの交尾成功度(配偶者数の期待値)は、サイズ依存的に増加するが、あるサイズで頭打ちとなって、大型オス間ではサイズ依存的な関係はみられなくなる。つまりオスにとって配偶者数は限られていて、しかもメスのサイズを繁殖力の有効な指標として用いることができると考えられる。産卵盛期には、交尾前ガードペアが高密度で観察されるため、オスが複数の成熟メスと出会う機会も高頻度で存在すると期待される。そこで本研究では、テナガホンヤドカリを対象種として、オスによる配偶者選択を検証した。


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