| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-793

ミゾゴイの生態 〜なぜ、夜行性の鳥と言われてきたか〜

川名国男 バードライフ・アジア

ミゾゴイの生態については、詳しいことは不明とされてきた。2006年から3年間にわたる繁殖調査の結果、生態の基本的なことが明らかになった。これらの新しい知見は、過去2007年、2008年の2回にわたり当学会で発表してきた。今回は、2008年に実施したソングポストにおけるさえずりの実態調査と非繁殖期における行動調査を加えて、3年間のまとめとして発表する。

これまでの多くの鳥類図鑑および解説書には「ミゾゴイは夜間に活動する」とあるが、繁殖期における親鳥の活動は昼間のみで夜間の活動は全く認められなかった。親鳥は、日没直後に巣へ戻り、雛とともに休眠をして、日の出とともに採餌・給餌活動を開始した。また、渡来の直後からはじまる夜間のさえずり行動は、タカ類やカラス類など天敵からの攻撃を避けるための効果的な行動であり、つがい形成となわばり確保のためであった。

さらに、非繁殖期における活動を解明するため、11月から12月にかけて、横浜市立よこはま動物園ズーラシア動物病院の協力を得て、保護・飼育中の2個体で行動調査を実施した。結果は、日没とともに休眠し、日の出とともに活動を開始して、採餌等の行動は昼間のみで、夜間の活動は全く認められなかった。

これらの結果から、ミゾゴイは夜行性の鳥ではなく昼行性の鳥であることが明確になった。ではなぜ、夜行性の鳥と言われてきたか。それは、夜間に盛んに囀ること、薄暗い林で営巣すること、採餌や給餌活動についての観察が不十分であったこと、夜間における観察事例がなかったことなどが考えられる。とくに、夜間に鳴くから「夜行性の鳥」という単純な思い込みもあったであろう。

ミゾゴイの生息地には、多くの在来の動植物が豊かに息づいている。ミゾゴイは、その象徴である。今後は、生息環境の特性に重点をおいた調査を行い、種の保護と生息地の保全策について提言をしていきたい。


日本生態学会