| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PC2-794
ミミズが草地・林地から本来の生息地でない路上等に這い出し、日光に曝され苦しんでいるのがよくみられる。この行動は古くから知られているが、その原因は明確でない。この行動の季節的変化を知るため、都内江東区の人工的な緑地において約1年間(1998年5月から1999年7月)、ほぼ毎日、緑地(約930平方メートル)から路上や駐車場(約980平方メートル)に這い出てくるミミズを採集した。5267個体のミミズを採集した。すべてフトミミズ科で、アオキミミズ(Pheretima aokii)、ヒトツモンミミズ(P. hilgendorfi)、ハタケミミズ(P. agrestis)、ヘンイセイミミズ(P. heteropoda)を確認し、前2種が優占した。環帯を持つ成体とともに未成熟個体(幼体も含める)も多数採集されたことから、這い出す行動は生殖活動に起因しているとはいえなかった。3月から9月にかけて雨が多量に降ると、ミミズが多数這い出してくる傾向にあった。しかし、当てはまらないこともあり、晴天の続く11月にも多数のミミズが這い出した。酸性化した降雨がミミズの忌避行動を誘発している可能性があったため、年間を通じ多数出現するヒトツモンミミズの酸性液に対する感受性試験を行った。この種のpH閾値は3.5付近で、調査地付近の降雨の年間平均pH値(約5.0-5.2)に比べ低かった。この種の多い表層土壌pHも約6.9であり、降雨のpHは這い出す行動を誘起するとはみなせなかった。ミミズの這い出しは、降雨後の土壌中の二酸化炭素の急増による忌避行動であるという説が有力であるが、それ以外にも原因が存在すると思われた。