| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
シンポジウム S08-5
外来植物の侵入による植物群集構造の変化は、地上部や地下部での相互作用(被食・分解)においては資源の質の変化を意味し、時に炭素、窒素循環など生態系レベルの影響を引き起こす可能性がある。この影響は、植物の機能的性質が外来・在来植物で大きく異なるときに顕著になると考えられる。また、特に貧栄養な生態系では、外来植物は窒素固定能によって生態系機能を大きく変化させることが多い。つまり外来植物は、外来種であるというだけでなく、窒素固定能によって被食・分解プロセスに影響を与える場合があると考えられるが、外来と在来の窒素固定植物が葉の機能的性質などにおいてどのように異なるかは明らかでない。そこで、ニュージーランドの氾濫原に共存する外来・在来低木(ともに窒素固定・非窒素固定種を含む)41種を用い、葉の機能的性質、および被食率、分解速度の比較を行った。
その結果、外来低木は在来低木より、また窒素固定低木は非窒素固定低木より、C:N比が低くN:P比が高いということがわかった。総フェノール、縮合タンニン濃度は在来低木より外来低木で高く、窒素固定能の間では違いがなかった。被食率は非窒素固定低木より窒素固定低木で高かったが、外来・在来では違いがなく、分解速度はグループ間で差がなかった。すべての種をプールした場合、被食率と分解速度の種間差は、特に葉のC:P比と総フェノール濃度に説明された。これらの結果は、外来窒素固定低木はある性質において在来窒素固定低木と異なるが、その性質が必ずしも群集全体の被食・分解プロセスを制御する性質とは一致せず、外来窒素固定低木が被食・分解プロセスに必ずしも顕著な影響を及ぼさないことを示唆している。