| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
シンポジウム S08-6
島嶼の生物群集に及ぼす外来種の影響は、外来種が食物網のどの栄養段階に侵入するのかによってさまざまである。本土からの距離が遠く、小さな海洋島では、本土や大きな島嶼に生息する最上位捕食者を欠くため、肉食哺乳類やヘビ類の人為的な導入が鳥類や爬虫類個体群を壊滅的な状態にまで激減させることが多い。一方、有毒なヒキガエルの導入が、餌となる地表徘徊性動物の群集を改変するだけでなく、ヒキガエルを食べた捕食者を死に至らしめることで、食物網の上位にも下位にも多大な影響を及ぼすことも知られている。さらに、従来は上位捕食者の導入による被害を受ける側とばかり思われていたトカゲ類でさえ、外来種として導入された島嶼においては、島固有の昆虫類に多大な影響を及ぼすことが明らかにされている。
本発表では、まず伊豆諸島の島々において実施してきたシマヘビーオカダトカゲー地表徘徊性無脊椎動物の長期観測結果を元に、イタチとヒキガエルの導入がもたらした影響を評価する。次に、小笠原諸島に導入されたグリーンアノールが在来の昆虫相を激変させるほどまでに高密度に達した理由を探るため、小笠原諸島と同時期、あるいはそれ以前にグルーンアノールが導入されたミクロネシアの島嶼(サイパン、グアム、ロタ、ヤップ、パラオ諸島等)で行ったセンサス結果をもとに、在来のトカゲ群集、陸生鳥類群集の多様性がアノールトカゲの定着と増加速度に与える影響を考察する。