| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
シンポジウム S21-4
京都大学フィールド科学教育研究センター(京大フィールド研)は、京都大学の森林域、里域、海域生態系の研究施設を統合して、2003年4月に発足した。この組織統合を通して従来の生態系ユニットを横断した研究者間の連携が可能になり、森林−里−沿岸海域の生態学的なつながりの解明が地球環境問題の解決に不可欠であるという『森里海連環学』を提唱し、それを核とした教育研究を展開している。
【研究】京大フィールド研の施設が立地する由良川(京都府)、古座川(和歌山県)、仁淀川(高知県)を主要な研究フィールドとして、森里海連環学研究を進めている。H21年度から文科省特別教育研究経費「森里海連環学による地域循環木文化社会創出事業」を開始し、荒廃人工林の間伐が水圏生態系に与える影響を大規模フィールド実験を通して検証する。適正な森林管理を可能とする木文化社会の構築という、社会経済学的なアプローチも並行して行う。
【教育】大学や地域の教育においても、森里海連環学を基礎とした学際的・分野横断的な広い視野を持つ人材育成に努力している。フィールド研は教員20名程度の小部局だが、京大の学部・大学院教育に加えて、全学共通教育に講義4科目、実習6科目、新入生少人数セミナー15科目を提供する。とくに、由良川、古座川、別寒辺牛川(北海道)の3流域で行う森里海連環学実習は、北海道大学と共同で両大学の学生が参加して、上流の森林域から河口までの連環を1週間かけて調べるという、他に例のないユニークな試みである。地域連携として約10校の高校生実習を担当し、その中に森里海のつながりに関する教育を組み込んでいる。京都市内や各研究フィールドにおいて毎年1回程度の市民公開講座を開催し、森里海連環学の重要性を啓蒙している。(森里海連環学の展開−15)