| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) C1-08

春日山照葉樹林防鹿柵実験区における木本実生群集の動態

*前迫ゆり(大阪産大・院・人間環境),名波哲(大阪市大・院・理),神崎護(京大・院・熱帯)

春日山原始林(特別天然記念物,世界文化遺産)にはコジイ-カナメモチ群集などの照葉樹林が成立している。しかしシカの生息密度が20-30頭/Km2ときわめて高く(鳥居ほか,2007),草本および木本の採食や樹皮剥ぎなどによって森林更新阻害や生物多様性喪失などが生じている(前迫,2006, 2009ほか)。シカが採食しない国内外来種ナギと国外外来種ナンキンハゼが春日山原始林に侵入・拡大しており(Maesako et. al, 2007),森林の未来が危惧される。 そこで,森林保全に向けてシカと外来種の影響を定量的に把握することを目的として,2007年10月に春日山原始林に防鹿柵実験区を設置した。

防鹿柵と外来種除去(ナギまたはナンキンハゼをカット)効果を明らかにするために, a)防鹿柵・外来種生育区,b) 防鹿柵・外来種除去区,c) 防鹿柵無・外来種生育区,d) 防鹿柵無・外来種除去区からなる4タイプのサブプロット(5m×5m)を, 1ユニット(10m×10m)として,6実験区を設定した。樹高1.3m以下の木本について,春期(5-6月)と秋期(10-11月)に個体数と高さを測定し,春期には草本種も記録した。森林への種子供給を調査するために,サブプロットあたり2個のシードトラップを設置するとともに,シカの森林利用状況を把握するために,各実験区に1台の自動撮影装置を設置した。

その結果,ナンキンハゼ実験区では,防鹿柵設置によって木本個体数および木本種数が,増加する傾向を示した。一方,ナギ実験区では,防鹿柵設置による効果は顕著ではなかった。またナンキンハゼ実験区では,防鹿柵内で外来種除去効果がみられたが,防鹿柵非設置区では,外来種除去効果はみられなかった。自動撮影装置およびシードトラップの解析結果とあわせて,木本実生群集の動態を考察する。


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