| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) C2-08

年変動の大きい森林リターの推定法

千葉幸弘(森林総研)

森林の純一次生産量NPPは、光合成量と呼吸量の差し引きによる光合成法のほか、小川(1967)が定義した積み上げ法で推定されるのが一般的である。積み上げ法によるNPPは、一定期間における地上部現存量の増分、枝葉などの枯死脱落量(リター)、被食量の総和である。1960〜1970年代のIBP当時、様々な生態系のNPPを推定する一環で、リター量の推定が多く報告された。リターは森林の種組成や林齢あるいは森林構造の違いなどを反映して変化するであろう。しかし台風などの気象条件による影響が大きく、リターの季節変動だけでなく、年間リター量もかなり変動するため、樹種や森林構造などの要因にどの程度依存しているか見極めるのが難しい。

森林の炭素固定量を評価するためには、その検証データとしてNPPの推定値が必要だが、光合成法では光合成や呼吸のスケーリングに未解決の問題が多くその推定には不安が残る。一方、積み上げ法では被食量だけでなくリター量の推定精度が不安定であり、いずれの評価手法も不確実である。こうした状況を打破するためには、個々のフラックスの推定上の欠陥を、ひとつひとつ潰していくことも必要である。そこで、森林群落においてブレが大きいリター量に関して、その発生の仕組みを考慮した推定法とその妥当性を検討した。

生育空間に余裕があれば樹冠は横方向へも拡大するが、余裕がなければ樹高成長とともに樹冠は上方へ移動する。その過程で枝葉の枯死脱落によってリターが発生する。枝リターの総量としては、樹冠下部における枯れ上がりに起因するものが多くを占めるであろう。一方、葉リターは樹冠内の葉群が順次脱落するので、樹冠全体から脱落すると解釈できるであろう。こうした状況を考慮して、リター発生をモデル的に表現し、実測値との比較検討を行った。


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