| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) D1-06

森林群集における二層構造システムへの進化条件

*高田壮則,甲山隆司(北大・地球環境),中島久男(立命館大・理工)

森林は多様な樹木種が光資源,土壌養分をめぐって競争しながら共存する空間であり,その層構造が樹木種間の共存機構に大きな影響を与えていると言われている(森林構造仮説; Kohyama(1993))。そこで、生物個体の各層間の成長、各層での繁殖・死亡の過程を記述するモデルを「多層構造系」と名付け,負の密度効果が多層構造系の動態の安定性に与える影響について検討するために解析を行ってきた。

本講演では、一層構造をもつ野生型Yの中に二層構造へと進化する突然変異型Xが誕生した状況を記述する一層―二層混合モデルを考え、新しい種Xの侵入の過程、および野生種Yと新種Xの共存の過程を解析した結果を報告する。

このモデルでは、各種・各層の個体の繁殖率、成長率、死亡率は密度効果を受けており、密度効果を与える個体数指標として、下層への密度効果は全個体数によって、上層への密度効果は下層個体の一部(割合Q)と上層個体によって与えられるとした。Qが小さいことは、上層個体がより大きく密度効果を与えることを意味する(一方向的競争)。解析の結果、新種Xの侵入可能条件は、

        K2 >Q K1

であり、式中K1, K2は下層個体、上層個体それぞれの環境収容力を表す。この条件は一方向的競争の度合いが侵入可能性に大きく影響を与えることを意味する。その条件が成立している場合に2種の共存関係について解析した結果、繁殖率不変の進化では、上層が死にやすい必要があり、死亡率不変の進化では、上層の繁殖が少ない必要があることが明らかになった。また、他の進化シナリオ、競争耐性種の侵入などについて2種の共存関係について解析した結果を報告する。


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