| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) D1-07
生物個体の生活史における繁殖戦略は成長と生存の二つの戦略の組み合わせとして考えられる.この二つは生涯の繁殖成功度つまり適応度と密接に関わっていると仮定する、ここでいう成長戦略とは繁殖に必要な器官の発達、資源の貯蔵を意味し、その大きさや資源量に比例する繁殖率が存在すると仮定する.生存戦略とは気候、天敵や病気、競合する他種との相互作用の中で発生する死亡、資源の流出、さらには資源量の変動というリスクをいかに回避するかという防衛を意味している.この二つの組み合わせに対して一定率で流入する獲得資源量の中で両者のトレードオフの関係が成り立つ時、獲得資源を成長と生存に生涯にわたって繁殖に際し最適に分配するリスク回避戦略が生物個体の繁殖成功度を最大にする一つの効果を持つと考えられる.
ここで、獲得資源φの流入速度μ(φ)が環境におけるランダムな変動σ(φ)の影響を受けている場合、将来の生物個体の成長及び繁殖の成功は予測しがたい.
本研究では獲得資源φの流入速度μ(φ)が防衛コストλvφ(λ>0)とリスク回避度v(0≦v≦1)を含むIto過程に従う確率微分方程式による力学系に従うと仮定した数理モデルを構築し、
dφ={μ(φ)- λφ}dτ+(1-v)σ(φ)dβτ
死亡率(1-v)*γを持つ環境を想定した条件のもと確率制御理論を用いて最適リスク回避度vとその戦略での成長曲線の性質を解析した.結果、最大防衛コストλφが流入速度μ(φ)を有限のφでλφ≧μ(φ)となるときに流入速度の関数μ(φ)に関係なく最大体サイズを持ち、体サイズ分布が時刻τが十分経過しても一様にならない事を示した.