| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) E1-06

市民参加調査による多摩川水系の礫河原鳥類の生息状況の把握と洪水攪乱との関係性

*内田哲夫(埼玉大院・理工),浅枝隆(埼玉大院・理工) ,野村亮(自然環境アカデミー),島田高廣(自然環境アカデミー)

河川環境の診断は、河川生態系の連続性と台風などにより大きく変動する生態系である特徴を踏まえ、小・中面積空間を詳細に調査するだけではなく一方で、水系レベルの広域空間を粗くスクリーニングし評価する視点が重要である。また、広域の河川環境情報を得るためには流域の市民団体との協働が不可欠である。

本研究は、多摩川水系にて、河川環境の指標鳥類である礫河原鳥類を対象として市民参加型モニタリング調査を実施し、市民参加による水系モニタリング調査の可能性を検討することを目的とした。

調査はイカルチドリ、コチドリなどをモニタリング対象種として、繁殖期にあたる2009年の6月〜7月に多摩川(0km〜61.8km)及びその支流の浅川(0km〜13.2km)の河川区域を調査範囲とし、自然裸地毎に生息の有無、個体数を記録した。調査にあたっては、事前にGISを用いて2007年9月の台風9号後に撮影された空中写真から低水敷の自然裸地を抽出した調査地図と調査票を作成し、野鳥観察をしている市民に配布し実施した。得られた市民データに台風前の2006年秋に撮影された空中写真から抽出した自然裸地のデータを追加し、対象種が利用していた自然裸地面積と台風前後の自然裸地集団の面積との関係を比較検討した。

結果として、現地調査でイカルチドリ166個体、コチドリ36個体を記録し、対象種は2007年における自然裸地集団の中で大面積の自然裸地を有意に利用していた。また、2006年における自然裸地集団では、対象種が利用していた面積規模の自然裸地は顕著に少なかった。また、台風前後の自然裸地面積は、台風前の2006年秋が215.3haに対し、台風9号後の2007年秋季は424.9haに変化し、洪水攪乱により対象種の潜在的生息環境が倍増したことが示唆された。


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