| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) F1-03

里山景観の構成種となるために必要だった種特性とは何か?

*小林慶子(横国大・院・環境情報/山梨森林研),小池文人(横国大・環境情報研究院)

里山には、定期的な伐採・採取、耕作に伴う耕耘・施肥、有用樹種の植栽・栽培など様々な人間活動が存在する。この過程で里山景観の種は、生態的な種特性による種の選別 (攪乱耐性や地形、土壌環境等)と、人による選別 (植林・保護等)の両方の影響を受けている可能性がある。この研究ではこれらの選別要因を明らかにする。

調査は長野県埴科郡坂城町の200m × 200mを一景観単位とする100個の里山景観で行った。景観を捉える空間スケールには様々なものが考えられるが、本地域の里山景観において、 200m離れた任意の2地点が同じ植生タイプである確率は44%であり、本研究で用いた空間スケールは内部に複数の植生タイプを含む、景観としては最小レベルのスケールであると考えた。

景観単位毎に木本種43種(地域の木本フロラの約20%)の在不在を調査した。100個の景観単位は、種組成によるTWINSPANの結果、5景観タイプに分かれ、これらは地被組成と歴史に関係していた。種特性は、耐攪乱性や土壌環境の嗜好性に関する生態的特性(繁殖開始サイズ、萌芽能力、根の形態等)と、人による種の選別に関する利用特性(庭木、栽培、食用としての利用状況)を調べ、31種分のデータを収集した。解析では、種組成で分けた景観タイプ毎に、種の在不在を目的変数、種特性を説明変数としてロジスティック回帰を行った。

景観タイプのうち、薪炭林や松茸山として利用されてきた履歴を持つ森林景観タイプでは、繁殖開始サイズが小さいことが鍵であった。定期的な伐採を受けてきた里山林では、小さなサイズで繁殖を開始する戦略が重要だったことが示唆された。耕作歴のある景観タイプでは、食用としての利用が重要な特性であり、人による種の選別作用も影響していることが示唆された。


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