| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) F1-07

カバキコマチグモにおける営巣に関する環境選好性

弘中豊,安倍弘(日大院・生物資源科学)

カバキコマチグモのメスは,繁殖期である夏にススキなどの単子葉植物の葉を折り曲げて産卵用の巣(産卵巣)を作る.多くの生物にとって,産卵場所の選択は自身の繁殖成功を左右する要素の1つであるが,本種では母グモが産卵後に自身の子グモに食べられる「親食い」が行われることから,繁殖機会が1回しかなく,産卵場所の選択はより慎重に行われる可能性がある.野外で本種の産卵巣の分布を調べたところ,巣はある特定の場所に生えている植物に作られる傾向があった.そこで本研究では,産卵の為の営巣場所の選択に当たって,どのような環境要素が関わっているのかを検討した.

相模原市と札幌市に調査区を設定し,それぞれの調査区を1 m×1 mの格子状の区画に区切った.それらの区画の中で,産卵巣が作られるススキなどの植物が優占する区画を植物区画とし,各植物区画に隣接する区画を隣接区画として類別した.植物区画については,産卵巣の数の他に,営巣に関わる環境要素として,樹冠被度,積算照度(午前・午後),土壌水分含量,巣が作られている植物の草丈・葉長・葉幅を計測した.一方,隣接区画については,環境要素として巣が作られている植物の被度,全ての植物の被度,樹木が優占している(枝や葉に覆われている)区画の数,植物区画よりも草丈が低い植物が生えている区画の数・高い植物が生えている区画の数をそれぞれ計測した.

調査で得られた植物区画内の産卵巣の数と植物・隣接区画における環境要素の計測値について,産卵巣の数を環境要素から説明づける為の統計モデルを構築し,営巣場所の選択に大きく関わる環境要素の特定を試みた.


日本生態学会