| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) F2-02
中山間地では過疎化,高齢化などに伴い,管理放棄される林分が増加している.その現状を解決するため,アグロフォレストリー,特に「林畜複合システム」が着目されている.九州地方ではクヌギ林内への牛の放牧が行われ,それにともなう植生,土壌特性の変化についての研究がなされている.一方,豚の放牧の事例は少なく,豚の行動に関する研究はあるが,植生への影響を調査した事例はない.そこで,本研究では熊本県菊池市において,クヌギ林内への豚の放牧にともなう林床植生,土壌の変化を明らかにすることを目的とした.
2008年2月から2009年2月まで放牧が行われたクヌギ林において2009年10月に放牧区6プロットを設置した.対照区として同様の標高,斜面方位のクヌギ林に4プロットを設置した.それぞれのプロットにおいて,5m×5mのコドラートを設置し,樹高130cm未満の植物の種名,最大自然高,被度を記録した.環境要因として,開空度,土壌水分,土壌三相,pH,C/N比を測定した.植生データ,環境要因のデータをもとに,クラスター解析,CCA解析,DCA解析を行った.
全10プロットあわせて26科58種が出現した.林床植生のクラスター解析の結果,放牧区と未放牧区にグループ化され,放牧により植物の種組成が変化することが示された.出現種数,優占種数,Shannonの多様度指数はいずれも放牧区で高い値となった.放牧区では多様な種が優占種として出現したが,未放牧区ではすべてのプロットにおいて,ネザサの優占度が最も高かった.出現種の生活型で見ると,放牧区では一年生草本が13種出現したが,対照区では全く出現しなかった.一方,つる植物は放牧区で出現せず,対照区で8種出現した.また,土壌は,未放牧区と比較して放牧区でpH,土壌水分,土壌の乾重量が高い値を示し,C/N比が低い値となる傾向を示した.