| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) F2-11

里山地域における住民協働モニタリング調査の継続的運営について

*山岸洋貴(里山科学館キョロロ),三上光一(長野大学),永野昌弘(里山科学館キョロロ)

日本の国土のおよそ4割を占める里山地域は、農業や林業などといった人々の営みと自然環境の相互作用によって形成された里山生態系を成しており、多様な生物の生育場所である。近年、里山地域では急速な過疎化が進み、これまで管理が行われてきた棚田や林が荒廃し、そこに生育する里山特有の動植物の存続が危ぶまれている。本研究がおこなわれた新潟県十日町市松之山は世界有数の豪雪地域であり、数多くの棚田とブナ林が接して存在する景観を持ち、極めて生物多様性が高い里山地域である。この松之山でも里地の過疎化や高齢化により里山環境の荒廃が進んでおり、この環境変化が豊富な生物相に大きく影響することが危惧されている。しかし、環境変化が実際にどのように生物相に反映されるのか、そのメカニズムは明らかではなく、長期的な保全策を考える上でもこれらを解明する必要がある。松之山では、持続的なモニタリング調査を目指して、専門的な知識をもった里山科学館の研究員と住民協働による生物モニタリング調査が実施されている。特に種子植物に関して、フロラ調査<花ごよみ調査>を2007年から毎年、積雪期を除き毎月1回、松之山にておこなわれた。住民参加の野外調査は、多くの住民が気軽に参加できるよう、参加者を記入係、写真撮影係、開花している植物を探す係に分け、開花している植物を記録するという単純な調査にした。また、調査参加後、より調査の意義を理解してもらうことと調査内容を広く発信することを目的に、科学館に展示する植物紹介マップの制作に参加・協力してもらった。さらに、調査結果をブログやデータベースに登録したり、調査地を紹介するパンフレットに利用することで、単なるデータの集積ではなく地域の活性化も念頭に入れた活用を行い、持続的なモニタリング調査を目指した活動を行っている。


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