| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) G1-06

可変性二年草ハマサジの開花齢と稀にみられる多回繁殖

*荒木悟,國井秀伸(島根大・汽水域研セ)

二年草とされるハマサジ(イソマツ科)について、発芽から開花までの年数、及び、実生数、結実率と地形の関係を調べた。太田川放水路(広島市)沿岸の干潟では、標高1.4m付近の平坦部と、より低い側の斜面に、ハマサジ等の塩生植物が生育する。発芽は3〜6月(稀に晩秋)、開花は7〜12月(主に8〜10月)に見られる。2006年春の実生の出現は平坦部に多く(228〜650/m2)、斜面では少なかった(31〜147/m2)。2006年に発芽した個体の開花齢を調べたところ、その年の9月まで生存していた個体のうち3%が発芽1年目でありながら開花した。しかし、発芽から2年目の2007年でも、花期まで生存していた個体のロゼットのうち開花したのは10%だった。同様に、2008年の開花率は36%、発芽4年目にあたる2009年の開花率でも44%であった。発芽率は年ごとに上昇したが、開花ロゼット数は、発芽3年目の2008年が最大だった。2006年に発芽したものの一部は、2009年12月の時点で未開花のまま生存しており、これらの開花は、発芽5年目以降になる。この調査の過程で、複数のロゼットを形成する個体が稀に見られた。このような個体の中には、ロゼットによって開花する年が異なるケースがあり、個体レベルで見ると多回繁殖になっていた。調査地では、ミツバチを中心に、膜翅類、双翅類、鱗翅類の訪花が見られた。2006年の結実率は、標高1.4m付近の平坦部と0.4〜0.8mの斜面で有意に異なった(それぞれ66%、40%)。低い方が満潮に伴う水没時間が長いため、受粉可能な時間が短い、または、花粉や花蜜が流出するといった影響を受けると考えられる。


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