| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) G1-10

優占樹種の結実豊凶が散布者を共有する低密度樹種の種子散布に及ぼす影響

*直江将司(京大・生態研), 酒井章子(地球研), 正木隆(森林総研)

種子散布は植物の数少ない移動分散の手段であり、植物の分布や動態を理解する上で欠かせない現象である。液果樹木では、種子散布は果実食者(鳥類や哺乳類など)によって行われる。一般に、液果樹木の種子散布は植物と果実食者間の直接的な相互作用の結果とされる。しかし、果実食者を介した樹木間の間接的な相互作用も種子散布に大きく影響する可能性がある。例えば、複数種(個体)で同時に結実し、果実密度が高くなれば果実食者が誘引され、種子は1種(個体)で結実した場合よりも散布されるかもしれないが、果実密度が高くなり過ぎ、餌として飽和すれば種子は十分に散布されないかもしれない。しかしながら、樹木間の相互作用は種子散布への影響要因として、これまで殆ど研究されてこなかった。発表者は、優占樹種の結実豊凶によって、果実食者を共有する低密度樹種の種子散布は大きく変化するのではないかと考えた。

調査地は茨城県にある約100haの冷温帯林、小川試験地である。優占樹種ミズキの結実年には森林の果実密度は不結実年の12倍にも達する。本研究では、6ha永久プロットに格子状に327個の種子トラップを設置、液果樹木の結実期間である6月から12月にかけて2週間毎に種子を回収し森林の果実密度を求めた。また、回収種子からミズキと低密度樹種5種について樹種毎に、果実食者による種子の持ち去り率、持ち去り量、散布距離、散布時期を求めた。回収種子に果肉が無ければ果実食者によって持ち去られた種子とした。

この研究では、3年間の結果にもとづいて、(1)優占樹種の豊凶は、果実食者を介して低密度樹種の種子散布(持ち去り量・率、散布距離・時期)に影響するのか、(2)その影響は低密度樹種の特性(結実期や果実食者相)によってどのように異なるのか、を検討する。


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