| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) G2-10

半乾燥地の耕作放棄後の土壌水分移動特性に多年生草本の侵入が及ぼす影響

星野亜季(東大・農),藤巻晴行(筑波大・生命環境),大黒俊哉(東大・農),ジャムスラン・ウンダルマ(モンゴル農大),武内和彦(東大・農)

半乾燥地における耕作放棄地では、典型的な多年生草本群落の消失や土壌構造の破壊や風食による土壌水分移動特性の変化をはじめとする、土壌劣化を伴う土地荒廃が問題となっている。耕作放棄後、10年程度経過すると、多年生草本がパッチ状に生育する。多年生草本の侵入は、風食防止の観点から回復に寄与していると考えられるが、多年生草本の侵入そのものが、耕作放棄地の土壌および植生へ及ぼす影響についてこれまで十分に評価されてこなかった。そこで、本研究では、半乾燥地に位置するモンゴル国の放棄年代別(放棄後2,9,18年)の耕作放棄地において、パッチの有無による植生および土壌水分移動特性の違いを比較することで、多年生草本の侵入が耕作放棄地の土壌水分移動特性を介した植生回復へ及ぼす影響について評価した。

放棄年代別の圃場を5サイトずつ設置し、調査枠15枠を各サイトのパッチ内外に設置し、植生調査を行い、DCAにより序列化した。また、土壌コアサンプリングをパッチ内外で行い、水分移動特性を測定した。

DCA1軸については、放棄年数と相関を示し、放棄後9年のパッチ内では、パッチ外よりDCA1軸の値が大きいのに対し、放棄後18年では、パッチ内外の差は確認されなかった。また、放棄後18年サイトのパッチ内では、パッチ外よりも一年生草本の被度が有意に高い結果となった。水移動特性については、放棄後9年では、パッチ内外で大きな違いは無いが、放棄後18年では、パッチ内では、パッチ外よりも、表層の土壌水分サクションが小さく、一年生草本の優占する放棄2年後の土壌水分サクションと同様の傾向であることが分かった。以上より、多年生草本の侵入後10年程度経過した耕作放棄地では、土壌水分移動特性を介した植生回復は確認されなかった


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